JMSCAウェブマガジン

メニュー

「各種目で金メダルを含む複数メダルを」 鈴木友希ユースHCが語る世界ユース選手権への展望

インタビュー公開日: 2026-07-15
「各種目で金メダルを含む複数メダルを」 鈴木友希ユースHCが語る世界ユース選手権への展望

世界ユース選手権は、世界の強豪が一堂に会するユース世代最高峰の舞台だ
Photo : © Richard Aspland/World Climbing

7月18日から25日にかけて、イタリア・アルコで「ワールドクライミング世界ユース選手権 アルコ2026」が開催される。ボルダー、リード、スピードの各種目で世界一を争う、ユース世代最大の舞台だ。2026年度からユース日本代表ヘッドコーチを務める鈴木友希氏に、日本代表の強みや注目選手、大会への展望について聞いた。

(取材・文/CLIMBERS編集部)
SUZUKI Yuki
プロフィール
鈴木 友希 - SUZUKI Yuki
ユース日本代表ヘッドコーチ

1985年1月20日生まれ、東京都出身。幼少期からクライミングをはじめ、2007年にボルダーワールドカップ出場。13年からはユース日本代表コーチを務めるなど多くのユース世代を指導してきた。26年度よりヘッドコーチに昇格。普段は株式会社8611に勤務して都内のボルダリングジム「B-PUMP OGIKUBO」の運営に携わっている。
(Photo:© Lena Drapella/World Climbing)


日本は世界でも一、二を争う強豪国

――まず、鈴木さんとユース日本代表との関わりについて教えてください。

「最初にユース代表へ関わり始めたのは2013年頃です。そこから2021年頃まではユースをメインに担当していました。その後はシニア日本代表の強化に関わるようになりましたが、世界ユース選手権だけは帯同を続けていました。今年からはあらためてユース強化にも本格的に関わる形になっています。また、ヘッドコーチとして世界ユース選手権に臨むのは今回が初めてです」

――シニアとユースでは、指導する上で意識している違いはありますか?

「シニアはすでに競技スタイルが確立されている選手が多いので、細かな改善を積み重ねていくイメージです。アドバイスも一言二言で済むことが多いですね。一方でユースはまだ完成していない選手がほとんどです。いろいろな知識や考え方を与え、その中から選手自身が選び取っていく——そうやって成長を促すような指導方法を意識しています」

――日本のユース世代は世界ユース選手権でも長年結果を残しています。その強さの要因をどう見ていますか?

「ユース世代だけで見れば、日本は世界でも一、二を争う強豪国という認識を持たれていると思います。特にボルダーとリードでは長年国別メダルランキングの上位を維持しています。強い世代が下の世代に刺激を与え、その世代がまた次を引っ張るという好循環が続いていることが大きいと思います」

世界ユースへ向けた準備と注目選手

――世界ユース選手権に向けた強化について教えてください。代表合宿は実施されましたか?

「スピードは実施できましたが、リードとボルダーは天候不良のため中止になりました。時期的にも直前だったので、あらためて合宿を行うことはしていません」

――合宿の代わりに実施した取り組みはありますか?

「研修会という形で座学を行いました。その中で最低限伝えたい内容はしっかり共有しています」

――具体的にはどのような内容を伝えたのでしょうか?

「大会に向けてどうやってパフォーマンスのピークを合わせていくかという話や、ヨーロッパへの長距離移動への対応について説明しました。海外経験の少ない選手も多いので、移動による疲労をいかに軽減するかや、機内での過ごし方についても話しています。例えば着圧ウェアを活用すると疲労軽減に繋がるといった情報も伝えています」

――今回の代表チームにはどのような印象を持っていますか?

「男子はどちらかというと賑やかな選手が多いですね。女子は比較的落ち着いた印象です。もちろん個々に違いはありますが、全体としてはそんなチームカラーを感じています」

――ボルダーで注目している選手を教えてください。

「男子は中山拓弥選手ですね。代表は初めてですし、私自身も今回初めてしっかり見ることができました。力強い登りが印象的で、とても楽しみな選手です」

――女子はいかがでしょうか?

「ユース世代はまだ海外の課題への対応がシニアほど進んでいない印象があります。海外では日本よりも距離感のあるコーディネーション課題が出ることが多いので、そういう意味では体格を生かせる選手にアドバンテージがあるかもしれません。狩野凪選手や村上和香選手には期待しています」

――リードで印象に残っている選手はいますか?

「男子では長森晴選手ですね。以前からボルダー以上にリードで伸びる選手だと思っていました。最近はパフォーマンスも上がっていますし、これまでの経験をしっかりトレーニングに繋げている印象があります」

――女子ではいかがでしょうか?

「小田菜摘選手には期待しています。今年はシニアカテゴリーでなかなか思うような結果が出ていませんが、ここで頑張ってほしいと思っています」

――スピードで注目している選手は?

「男子は齋藤蒼太選手です。すでに世界ユース選手権でメダルを獲得していますし、中国の世界記録保持者(4秒54)と同世代です。刺激を受けているはずですし、そのトップレベルにしっかりついていってほしいですね」

――女子はどうでしょうか?

「西村優杏選手ですね。6月末の公認大会でシニア代表派遣基準記録を突破しました。非常に期待しています」

――今後シニアカテゴリーでの飛躍を感じる選手はいますか?

「濱田琉誠選手と齋藤選手です。この二人は競技に対する考え方がユースというよりシニアに近い印象があります。自分をどう強化するかをよく理解していますし、登りについても言語化して説明できる。かなり高いレベルの話ができる選手という印象を受けています」

目標は金メダルを含む複数メダルの獲得と国別メダルランキング1位

――今大会のチーム目標を教えてください。

「選手にも伝えていますが、各種目で金メダルを含む複数メダルの獲得、そして国別メダルランキング1位が目標です」

――達成への手応えはいかがですか?

「カテゴリーによって状況は異なりますが、メダル獲得は十分に狙えると思っています。ボルダーとリードはもちろん、スピードも決勝に進出すれば何が起きるかわかりません。日本勢によるワン・ツー・スリーも見てみたいですね」

――ボルダーとリードの両種目に出場する選手も多くいます。その影響はありますか?

「大会期間が長いので体力面は少し心配しています。日程上は休養日もありますが、ラウンドを重ねるごとに疲労が蓄積していく可能性もあります」

――開催地のアルコにはどのような印象を持っていますか?

「クライミング大会の聖地というイメージです。ヨーロッパの大会はどこも盛り上がりますが、アルコは特別ですね。町自体が小さいので、大会期間中は町全体がクライミング一色になります。どこへ行っても選手や関係者に会うような環境で、今のユース世代にとっては初めて経験する雰囲気になると思います」

――アルコの壁についてはどのような印象がありますか?

「リード壁が長いという印象ですね。傾斜もありますし、独特のスケール感があります。最近改修も行われていますが、やはりアルコらしい特徴のある会場だと思います」

――メダル以外に、選手たちへ期待することはありますか?

「世界各地の選手と関われるのが世界ユース選手権だけなので、しっかりその経験は持ち帰ってもらいたいと思っています。良くても悪くても、何か一つは必ず持って帰れる大会だと思います」

――ヘッドコーチとして初めて迎える世界ユース選手権になります。意気込みを教えてください。

「自分が緊張すると選手にも伝わってしまうので、できるだけ普段通りでいたいですね。選手たちがいつも通りの力を発揮できる環境をつくることも私の役割だと思っています」

――最後に、大会を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。

「選手たちが結果を残してくれるのが一番うれしいことです。ただ、思うような結果にならない選手も当然いると思います。それでも、この大会はゴールではなく次のステップへ向かうための通過点でもあります。結果だけで評価するのではなく、それぞれの選手がここでどんな経験を積み、次へどう繋げていくのかにも注目していただければと思います」