鈴木音生が示した地力 リード初戦を安井HDが分析

Photo : © Kazushige Nakajima/World Climbing
2026年5月8日から10日にかけて中国・呉江で開催されたワールドクライミングシリーズ・リード第1戦。男子では鈴木音生が安定した登りで優勝を果たし、シーズンの好スタートを切った。一方で女子は世界のレベルの高さをあらためて感じさせる結果となった。大会の内容と今後の展望について、安井博志ハイパフォーマンスディレクターに話を聞いた。
――中国・呉江でのリード第1戦は男子で鈴木音生選手が見事に優勝しました。
「やっぱり強いなと思いました。アジア選手権の段階で、シーズンに臨む前から“今シーズンはかなり良い”と言っていた通り、鈴木はずっと調子がいい状態です。登りにも余裕がありますし、本当に落ち着いてトライできています。呉江のルートは一見ダイナミックに見える部分もありましたが、内容としてはクラシックな要素が強く、純粋にトレーニングを積んでいないと上位に行けないような設定だったと思います。シーズンオフでの鍛錬を含めた地力がそのまま結果に表れた大会でしたし、しっかり準備してきた成果が出たのではないかと感じています。吉田智音や安楽も含めて日本代表選手たちには地力がありますし、2種目へ挑戦している安楽についてはここからリードにもさらに合わせていってほしいと思っています」
――ボルダーとリードの両種目に出場する流れについて、海外の傾向はいかがですか? やはり減ってきていますか?
「減ってきていますね。両方で結果を狙える選手自体がかなり少なくなっています。ただ、もし両方狙えるのであれば素晴らしいチャレンジになると思います。誰にでもできる挑戦ではないですから」
――金メダルを獲得した男子に対し、女子は決勝進出を逃す結果となりました。森秋彩選手が不在でしたが、女子の戦いをどのように見ましたか?
「やはり全体の底上げが必要だと感じています。スロベニアの選手などと比べると、一手一手の動きにゆとりがある。気持ちの部分でも“しっかり登れる”という自信がないと戦えません。ヤンヤ(・ガンブレット)でも負けるわけですから、女子のレベルは本当に上がっていると感じています」
――女子で優勝した18歳のアニー・サンダース選手(米国)はかなり伸びてきている印象です。ロサンゼルスに向けたライバルという位置づけになりますか?
「そうですね。彼女も練習量が多く、リードは相当やり込んでいる選手が勝てる競技になってきています。もっと日本チームとしてトレーニング量を確保していく必要があると感じています。日本のクライミングジムは混雑していて十分な本数を登れないことも多いので、環境面の整備も含めて考えていく必要があります」
――リード日本代表チームの今シーズンに向けてひと言お願いします。
「男子は非常に層が厚く、鈴木、吉田、安楽に加えて小俣史温や村下善乙といった選手も力を持っているので、“黄金期”が来てもおかしくありません。今後が非常に楽しみです。そして、安楽が両種目でどこまで戦えるかにも期待しています。世界的に両方できる選手は少ない中で、日本のエースとして両方引っ張っていく存在ですし、彼が両方で結果を出すことが単種目の選手にとっても大きな刺激になるはずです。チーム内の競争という意味でも良い流れが生まれていけばいいと思っています。女子は森以外の選手がどれだけ伸びてくるかが鍵になりますが、ポテンシャルのある選手がいますので、シーズンを通じての成長を見ていただきたいです。我われとしても長期的な視点で強化を進めていきますので、温かく見守っていただければと思います。森秋彩については、出場すれば間違いなく中心となる選手ですし、そのタイミングも含めて今後の展開は非常に興味深いと感じています」
