大政涼がけん引する日本スピード界 予選から勝負の時代へ

Photo : © Kazushige Nakajima/World Climbing
2026年5月10日に中国・呉江で開催されたワールドクライミングシリーズ・スピード第1戦。男子では大政涼が予選4位通過から決勝トーナメントに進出し6位に入った。世界記録の更新が続く中、競技レベルはさらに加速し、予選から勝負が決まる厳しい戦いとなっている。スピード界の現状と日本代表の今後の可能性について、安井博志ハイパフォーマンスディレクターに話を聞いた。
――スピード第1戦は男子で大政涼選手が決勝トーナメントに進んで6位でした。日本勢の結果をどう見ますか?
「現時点ではやはり大政に注目してほしいと思います。彼がチームを引っ張ることで日本チーム全体が活気づいていきます。男子は4秒台に入らないと決勝に進めない時代になってきていて、非常にハイレベルな争いになっています。その中で予選を4位で通過しているというのは本当にすごいことです。アジア選手権でもそうでしたが、予選では彼の良さがしっかり発揮されています。今後は決勝でいかにミスなくタイムを揃えられるかが鍵になります。16歳の中国人選手のように、すでに存在感を持った選手も出てきている中で、大政も注目される存在になっています。プレッシャー下での経験を積み重ねて、決勝でも結果を残せる選手に成長していくと思います。日本女子も6秒台に入り、小屋松恋や林かりんを中心にタイムは今後さらに伸びていくはずで、スピード種目全体として楽しみが広がっています」
――大政選手が昨シーズン年間3位という結果を残したことで、海外からの見方に変化は感じますか?
「大きく変わってきていると感じています。日本も強豪国の一つとして見られるようになりました。以前は中国やインドネシアに対して、こちらが挑戦する立場という感覚がありましたが、今は日本も警戒される存在です。インドネシアがやや停滞する一方で、中国やヨーロッパ勢は伸びてきていますし、タイの選手が4秒8台を出すなど、世界中で若い選手が一気に台頭しています。スピード種目は本当に混戦で、決勝に残れば誰が勝つか分からない状況です。大会の雰囲気も非常に緊張感があり、私たちも見ていてしびれるような、非常に面白い種目になっています」
――大政選手がここまで成長してきた要因はどこにあると見ていますか?
「環境の変化が大きいと思います。プロ選手としての自覚がしっかりあり、それを支えるトレーニング環境が整っていることが結果につながっていると思います」
――今大会では4秒54の世界新記録を16歳の中国人選手が樹立しました。このレベルに達すると、将来的にホールド配置の変更といった可能性はありますか?
「現時点では大きな議論にはなっていませんし、少なくとも次のオリンピックまでは変更はないでしょう。タイムはまだ伸び続けていますし、現状のルートでも十分に競技としての面白さが保たれていると感じています」
――スピード種目の今後の展望を教えてください。
「上位選手のタイムはかなり高いレベルまで来ていますが、その下の層がさらに詰まってくると思います。トップはある程度限界に近づいている一方で、そこに追いついてくる選手が増えていく。より拮抗した勝負になっていくはずです。その中でフィジカルの重要性はさらに高まっていくと感じています。決勝進出ラインのタイムをクリアすること自体が非常に難しくなってきていて、予選の段階から勝負になっています。ベストを出しても通過できないこともあるレベルです。ルール面も整備が進み、4レーンやミックスリレーといった新しい要素も加わりました。特にリレーでは中国が9秒台の世界記録をマークし、アメリカとの競争も激しくなっています。日本はまだ取り組みが十分とは言えませんが、選手たちも意識し始めているので、これからさまざまなスピード種目に挑戦して発展させていきたいと思います」
――スピード日本代表チームの今シーズンに向けてひと言お願いします。
「今シーズンは日本チームがさらに伸びると感じています。世界のトップとの差は着実に縮まっていますし、本当に誰が勝ってもおかしくない状況の中で、日本の選手が頂点に立つチャンスも十分にあります。スピードは非常に面白い状況になっていますので、ぜひ注目していただきたいです」
