U17とU19へ スポーツクライミングのユース年齢別カテゴリーが変更
Photo : Richard Aspland/IFSC
2025年から、スポーツクライミングのユース年齢別カテゴリーが変更。ユース世界選手権は「U16」「U18」「U20」から「U17」「U19」での実施となり、国内公式戦もそれに準じて開催されます。ユース日本代表ヘッドコーチの西谷善子氏にその概要を伺いました。
プロフィール
西谷 善子 - NISHITANI Yoshiko
ユース日本代表ヘッドコーチJOC ナショナルチームコーチ、JMSCA強化副委員長。2008年から日本代表スタッフに加わり、現在はユース代表ヘッドコーチを務める。
――まずはカテゴリー変更の概要を教えていただけますか。
「IFSC(国際スポーツクライミング連盟)は2025年から現行の年齢別カテゴリーを1歳ずつ引き上げます。14、15歳が対象だったU16(ユースB)は15、16歳が対象のU17に。16、17歳が対象だったU18(ユースA)は17、18歳が対象のU19にスライドします。これを受けてJMSCAもカテゴリー編成を変更する運びとなりました」
――U17とU19が新設されるということですが、今年まではU16、U18に加えてU20(ジュニア)がありましたよね。
「U20はIFSCの中で概念としては残りますが、ユース世界選手権では実施しないことが発表されています。そのためU20が実施されたユース世界選手権は2024年が最後だったんです」
――ジャパンカップも出場年齢が16歳以上から17歳以上に移行します。
「IFSCはシニアの国際大会の出場年齢を17歳以上としたので、ジャパンカップも合わせる形を取りました。順番的にはシニアの年齢変更が先にIFSC総会で発表され、その後にユースのカテゴリー変更もアナウンスされました」
――この変更を西谷さんはどう捉えていますか?
「IFSCが決めたことなので従わざるを得ないですが、翌年にU16(ユースB)の対象年齢に上がり、大会に出られることを楽しみにしていた選手はもう1年待たなければいけないですし、U20(ジュニア)としてユース年代での活動があと1年できるはずだった選手たちのことを思うと残念な気持ちはあります」
――今年13歳の選手は、本来は14歳となる来年にU16として各大会に出場できるはずだった、ということですよね。
「それが15歳になるまで、もう1年待たないといけなくなります」
――ユースのカテゴリー変更の背景には何がありますか?
「ユース世界選手権の参加人数が増え過ぎてしまい、開催国側で受け入れできなくなるリスクがありました。そこでカテゴリーを絞る選択を取ったことで、対象年齢も変更されました。選手としてのキャリアの第一歩としてこの大会を目標に努力しているユース選手も多いので、ユース世界選手権が継続的に開催されるための対策であれば、悪いことではないと思っています」
――カテゴリー変更によって国内ユース世代の強化に影響はありますか?
「年齢移行に合わせる部分は合わせていきますが、さらに下の世代から育成強化していくことは続けていきたいと考えています」
――ユースC・Dを対象とした「ユースフューチャーカップ」の開催がその一例だと思います。選手と保護者向けの研修会を開いていることが特徴的ですよね。
「ケガの予防と、勝利至上主義志向に拍車をかけないようにするため、JMSCAから情報発信していくことが大切で、参加必須の親子研修会を開いています」
――ユース選手たちはカテゴリー変更をどう感じているのでしょうか? ポジティブに捉えている選手は少ないと予想します。
「やはり出られるチャンスがあれば大会に出たいと思うのが選手の自然な考えだと思います。それはユースに限らず、翌年シニアに挑戦できるはずだった年齢の選手も同じです。いま15歳の選手が翌年からのワールドカップ出場のために一生懸命努力している中での年齢移行だったので、残念に思っている選手が多いのではと思います」
――U20がユース世界選手権で実施されなくなることで、大学進学後も競技を続ける選手が減ってしまう危惧はありますか?
「それをできるだけ防ぐために、大学生の大会を充実させなければという意見はJMSCA内でも出ています。ワールドカップの日本代表選手に選ばれることは非常に狭き門です。ユースから卒業した選手にとっては、大学生向けの大会がより整備されれば、国際大会に出られなくても競技者としてのキャリアを続けられるチャンスが広がると期待しています。また、大学生に限らず、競技を引退した選手全般のキャリア支援も重要な課題と認識していて、JMSCAビジネススクールなどの教育プログラムによって、選手が競技を通じて培った経験やスキルを社会で活かせる道をサポートしていきたいと考えています。このように、様々な形で競技を続けることだけでなく、選手たちが新たな挑戦に取り組める環境づくりにも力を入れていきたいですね」