スポーツクライミングの国際大会新ルールを紹介 2025年から一部が変更

Photo : 窪田亮
スポーツクライミングの2025年国際大会シーズンが4月のワールドカップシリーズボルダー第1戦で幕を開けます。IFSC(国際スポーツクライミング連盟)は今シーズンからボルダーでのポイント制導入やラウンド進出人数の変更など、新たなルールのもと国際大会を運用します。その概要を紹介します。
大会規定の変更
▼IFSC枠の撤廃
2024年までは各種目とも前年の世界ランキング上位10人に優先出場権(IFSC枠)が与えられていましたが、2025年から撤廃されます。各国の代表選考基準をクリアした選手のみワールドカップに出場できます。なお、日本の男子リードは2024年、IFSC枠だけで7人が出場権を確保していました。
▼国別出場枠数の変更
IFSC枠の撤廃に伴い、2024年の最大5人から最大6人に増加します。各国にはまず2人の枠が与えられ、そこに前年の世界ランキング1~40位までに入ったその国の人数に応じて1人から最大4人まで枠が追加されます。2人+1〜4人の最大6人という考え方です。
IFSC枠は選手個人に与えられていましたが、国別枠は各国に与えられます。2025年に日本へ与えられた出場枠は男子スピードが4人、それ以外の種目はすべて6名です。前述の通り、2024年のワールドカップ男子リードで日本は国別枠5人+IFSC枠7人の最大12人を派遣していました。日本代表チームの目線で考えると参加人数が減る格好となります。
▼出場可能年齢の引き上げ
出場できる最低年齢が16歳から17歳に上がります。この年齢はその年の12月31日時点のもので、選手によってはワールドカップ開催日時点で16歳でも出場は可能です。背景として、西谷善子ユース日本代表ヘッドコーチは「REDs(レッズ)」と呼ばれる低エネルギー問題を挙げています。競争の低年齢化によって減量し過ぎたり拒食症になったりして、さまざまな健康問題が引き起こされることが社会的に懸念される中、スポーツクライミングは体重に影響されやすいスポーツのため、低年齢からの過度な競争を避けるという意味でIFSCは年齢を上げたのだろうと推察しています。
なお、2025年からユースの年齢別カテゴリーにも変更があります。ユース世界選手権は「U16」「U18」「U20」から「U17」「U19」で実施されます(U17は15、16歳、U19は17、18歳が対象)。ユース世界選手権の参加人数増加に開催国側が対応できなくなるリスクがあったことで、今回のカテゴリー絞り込みと対象年齢変更に至りました。
競技ルールの変更
▼ポイント制導入(ボルダー)
これまでは完登数の多さ、次にゾーン数の多さで順位を決めていましたが、合計ポイント数の多さで順位を決める「ポイント制」が導入されます。1つの課題につき、ゾーン獲得で10ポイントが、完登で15ポイントが加算され、選手は最大25ポイントを得られます。課題が5つある予選、準決勝であれば合計125ポイント、4つある決勝は合計100ポイントが満点です。ポイントを獲得した課題に限り、アテンプトの失敗1回で0.1ポイントが減点されます。
アテンプト失敗による減点について、日本代表の安井博志ヘッドコーチは次のように述べています。「これまでは完登数、またはゾーン獲得数で並んだ時に、アテンプト数の少なさがものすごく重要でした。ただ、0.1ポイントのみの減点となるとアテンプト数が持つ意味は小さくなり、じっくりと攻めるのではなくフォールしてもどんどんトライしたほうがよい場面も出てきます。より体力のある選手が上位に入る可能性もあります。時間の使い方が変わるかもしれませんね」。
このポイント制はパリオリンピックのボルダー&リード種目におけるボルダーステージで採用されたコンセプトをベースとしています。ゾーンの数自体は、ボルダー単種目のフォーマットとしては変わらず各課題1つずつ。パリオリンピックのボルダーステージでは各課題2つずつでした。
IFSCが各国中央競技団体に向けて公開した説明資料では、オリンピック関係者からのスポーツクライミング3種目に関するフィードバックの中でボルダー種目が改善すべき種目として常に取り上げられていたようです。「よりわかりやすく、より魅力的な種目に」という提言に沿うべく、ボルダー種目の改善に向けた分析や議論が行われてきました。安井ヘッドコーチは「IFSCのレポートには『選手たちの多彩な能力を評価するシステム』とも書かれていました。各課題で満遍なくゾーンを取れた選手が、突出した能力で1つの課題だけを登り切った選手を上回るというルールです」とポイント制の考え方をコメントしています。
▼準決勝人数の変更(ボルダー、リード)
準決勝には、ボルダーは予選20位まで、リードは予選26位までの選手が進んでいましたが、いずれも24位までに統一されます。
▼決勝人数の変更(ボルダー)
6人から8人へと変更されます。人数が増えた分、選手にとっては決勝で戦えるチャンスが増し、観客にとってはさまざまな国の選手を決勝で観られる機会が増えるでしょう。
▼決勝進行方法の変更(ボルダー)
進行方法が「ローテーション制」へと変わります。これまで決勝は1人ずつ競技を行っていましたが、多くの時間帯で2人の選手が同時に登場して別の課題をトライするようになります。具体的には、第1課題の競技順1番手から4番手までと、最終第4課題の同5番手から8番手までは従来通り1人ずつ競技しますが、それ以外は2人の選手が同時に競技を行います。