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【選手コメント】クライミングW杯リード日本代表 第1戦で安楽宙斗、第2戦で吉田智音が優勝

公開日: 2025-05-15

クライミングワールドカップのリード第1戦が4月25~27日に中国・呉江で、同第2戦が5月2・4日にインドネシア・バリで行われました。日本勢は第1戦で安楽宙斗選手が男子1位、鈴木音生選手が同2位に入ると、第2戦では吉田智音選手が男子で初優勝、森秋彩選手が女子3位で表彰台に上がっています。選手たちは5月6日に羽田空港へ帰国。到着後、ワールドカップ出場の感想などを聞きました。

(取材・文/CLIMBERS編集部)
▼安楽宙斗(JSOL)
第1戦 優勝/第2戦 16位
―――第1戦での優勝、おめでとうございます。

「ありがとうございます。準決勝の流れがあまり良くなかったんですけど、改善点をその日に見出せて、決勝は90%ぐらい完璧な状態で、頭もすっきりした状態でトライできました。完登で決め切れたのでとても良かったと思います」

――オフシーズンのトレーニング成果は感じられましたか?

「はい。(大会での)オンサイトは細かいところが大事で、なんとなくトレーニングしているようじゃわからないところまでいろいろと考えてトレーニングしてきました。今までレストポイントを全然気にしてこなかったんですけど、やっぱり休めたほうが長く進める確率が高くなるので、レストの部分には重きを置いて練習してきました。それがいい形で表れての優勝だったと思います」

――第2戦は16位で準決勝敗退でした。

「トウフックしてから左手にヒールフックしてゆっくり行くのが想定ムーブだったと思うんですけど、すごくいいポジションにいて、余力もあって完登を狙えそうだったので浪費を抑えようとトウフック後に飛んでしまって落ちてしまいました」

――そこは次回に活かす反省点でしょうか?

「そうですね。ムーブで落ちたミスはワールドカップでは初めてでした。これを世界選手権前に経験できたのは大きいと思います」

――次回はボルダーのワールドカップ第2戦クリチバ大会(5月/ブラジル)に出場予定です。

「(優勝した)ボルダー第1戦の柯橋大会でかなりいい流れをつくれました。『こうすれば1位を取れるんだな』という流れが大体わかったので、それを忘れないようにしつつ、各ラウンドで随時気づきを得ていきながら優勝につなげられたらと思います」


▼吉田智音(摂南大学)
第1戦 4位/第2戦 優勝
――ワールドカップでの初優勝、おめでとうございます。

「ありがとうございます。11回目の決勝だったんですけど、はじめは決勝に残っても表彰台に上がれず、一昨年に初めて表彰台に上がるも金には届かず、去年のブリアンソン大会では本当にあと少しのところで金を逃してしまいました。決勝に残っても自分は優勝できないんじゃないかとナーバスになっていた部分があったので、次からは吹っ切れた気持ちで、より自分の実力を出せるようになるのではないかなと考えています」

――第1戦は4位、第2戦は1位。調子が良さそうに見えますが、ご自身ではどう感じていますか?

「今シーズンはリードに絞ると決めていて、ワールドカップの初戦に合わせて2月頃からずっとトレーニングしてきました。すでに3月頃には過去最高に調子が仕上がっていると自覚できていて、それが結果にうまく表れたのかなと捉えています」

――どのようにトレーニングしてきましたか?

「リードジャパンカップ(以下LJC)まではベーシックな練習で、その後はインスブルックに行ってより実践的な練習を重ねました」

――今後の出場予定を教えてください。

「まずは(6月の)インスブルック大会に出場予定です。バリ大会で優勝できたことで、ワールドカップの後半戦と(9月の)世界選手権にも出場できると思います」

――その後半戦に向けた意気込みをお願いします。

「今年はいいスタートを切れました。世界選手権が一番大きな目標ですけど、ワールドカップの年間表彰も狙っていきたいです」


▼鈴木音生(静岡県山岳・スポーツクライミング連盟)
第1戦 2位/第2戦 6位
――第1戦での銀メダル獲得、おめでとうございます。

「ありがとうございます。純粋にうれしかったです。決勝に進めたのが初めてで、その流れのまま表彰台に乗れて自信にもなりました。まだ上を目指せる感覚もあります」

――ビレイミスで競技がやり直しになった中での2位でした。

「身体的にもメンタル的にも疲れていて、もう1回やると聞かされた時はキツいものがあったんですけど、下部はある程度のムーブがわかっていましたし、いい登りができたと思います」

――第2戦でも決勝に進出しました。好調に見えますが、ご自身ではどう感じていますか?

「今シーズンは前半戦で結果を残さないと後半戦に出られない選考基準になっているので、前半戦に向けて調整して仕上げてきました」

――トレーニング量を増やしたり、工夫をしたりしましたか?

「難しいルートを短いレスト時間で何度もトライするトレーニングに取り組んできました。大会の1週間前ぐらいからトレーニングの量を落として質は高めていくやり方が自分にはハマって、いい感じに仕上がりました」

――今後の出場予定を教えてください。

「後半戦が6月下旬からインスブルックで始まりますが、第1戦で2位に入れたことでそこからの3連戦はおそらく出られると思います。すべてで決勝に行きたいですし、表彰台、優勝も狙っていきたいです」


▼小俣史温(日本体育大学)
第1戦 14位/第2戦 7位
――第1戦、第2戦の感想を教えてください。

「第1戦は練習から調子が良かったんですけど、予選は自分の認識とコンペティションにズレがあって、21位とぎりぎりでの通過でした。準決勝はいい登りができた反面、14位で敗退だったので落ち込みましたね。第1戦後の上海での調整がうまくいかず、迷走している感じになって考えるのをやめようと思って、トレーニングの頻度を落としてバリに向かいました。予選の1本目はしっくりこなかったんですけど、2本目はどうにか準決勝につなげられないかと工夫して登った結果、次につながりそうな部分があり、準決勝は2連戦の中で一番いい登りができたと思います」

――何が変わりましたか?

「チャレンジャー精神100%で、とにかくフルパワーで登ることだけ考えていました。緊張もあまりしなかったです」

――決勝に進出して7位でした。

「最後はスリップしてしまったんですけど、攻めた登りでのスリップだったので自分的にはいいチャレンジだったなと思っています」

――2戦を通して課題は見つかりましたか?

「これまで下半身をメインにトレーニングしてきましたが、上半身の持久力が足りないと感じました。上半身も含めて全身の持久力をもっと高めていきたいです。課題が具体的にわかったのでトレーニングが楽しみです」

――今後の出場予定を教えてください。

「インスブルック大会には出られると思います。優勝だけを見て、練習と大会どちらも頑張ろうと思います」


▼本間大晴(小原歯車工業)
第1戦 11位/第2戦 10位
――第1戦、第2戦の感想を教えてください。

「どちらも決勝に行けず、悔しい結果で終わってしまいました」

――課題の印象はどうでしたか?

「1戦目は割と上部まで行かせるような課題で、上部で決め切ることが求められました。自分はコースの読みを見誤ってしまったのが敗因だと思います。2戦目は予選からハードなルートでした。1戦目とはまた違った難しさがあり、対応できませんでした」

――第1戦で安楽選手が、第2戦で吉田選手が優勝しました。感じることはありますか?

「僕が20代半ばになっている中で、若さのパワーを強く感じています」

――今後の出場予定を教えてください。

「今回の成績が良くなかったので、おそらくワールドカップの後半戦には出場できないと思います。大会がないこともあり、外岩を登りに海外遠征して難しいコースに挑戦しようかなと考えています。フランスとスペインに行くことを計画中です」


▼清水裕登(愛媛県山岳・スポーツクライミング連盟)
第1戦 21位/第2戦 11位
――第1戦、第2戦の感想を教えてください。

「準決勝敗退という結果だったんですけど、久しぶりにワールドカップに出られて楽しかったです。思っていたより課題の強度が高く、そこに対応し切れなかった部分がありました」

――今回の代表メンバーの中では最年長でした。

「僕は決勝に進めなかったので、最年長として何かサポートできないかなという思いで一緒にオブザべーションしたりしました」

――今後の出場予定を教えてください。

「今年の代表選考基準ではワールドカップ後半戦に出られるかどうかがこの2戦の順位に懸かっていたので、まだわからないですけど出場はできないと思います。でも、これからもできるだけ大会には出たいと思っているので、今回得られた反省点をトレーニングに活かして頑張りたいです」


▼森秋彩(茨城県山岳連盟)
第2戦 3位
――今シーズン初出場となった第2戦で銅メダルを獲得しました。

「準決勝はゴール落ち、決勝はタイムアップと、未練が残り悔しかったです。でも、もっと強くなりたい気持ちになったり改善点が浮き彫りになったりしたので、そこは収穫でした」

――決勝は最後のクリップ直前に時間切れとなりました。同じような経験は過去にありますか?

「初めてでした。下部でクリップを飛ばしかけるミスがあり、それが響いてしまいました。オブザベーションと実際の登りにズレがあったので、そこは変えていきたいです」

――準決勝のゴール下と決勝の終盤で距離出しがうまくいかなかったように見えました。オブザベーションの時点から嫌な感じはありましたか?

「そうですね。最終面は距離感が遠いなと思っていて、ホールドが良ければ思いっきり行けたんですけどシェイプも悪く、そこで行きつ戻りつしてしまい時間を使ってしまいました。良いポジションにいられるよう、オンサイトトレーニングがもっと必要だなと思いました」

――今後の出場予定を教えてください。

「世界選手権はリードの出場権しか持っておらず、ボルダーにも出場したいです。そのためにも、もしボルダーワールドカップの出場権が回ってくれば(6月の)ベルン大会とインスブルック大会には出たいと思っています。まだ確定ではないですがリードはインスブルック大会、(7月の)シャモニー大会、(7月の)マドリード大会に出る可能性があります」

――今後に向けた意気込みをお願いします。

「バリ大会は3位で悔しかったですけど実力的には十分通用することがわかったので、これから出る大会はすべて優勝を目指したいです。ボルダーに関してはコーディネーション系だったりジャンプ系だったりの苦手な練習をしていて、その成果を活かしてワールドカップの決勝に残り、世界選手権の出場権獲得のために表彰台を目指したいです。(2028年オリンピックの)ロサンゼルスに向けて着実に強くなっていけたらと思います」


▼小武芽生(エスエスケイフーズ)
第1戦 33位/第2戦 10位
――第1戦、第2戦の感想を教えてください。

「1戦目は久しぶりに予選落ちしてしまいました。気持ちの準備をし切れないまま大会に出てしまった感じで、バリでは挽回できるようにしていたんですけど、カウントバックで決勝に行けず終わってしまいました」

――複数の選手が同じ高度で並ぶ“団子”にハマってしまいましたね。

「落ちたのは決勝に残れるか残れないかというような感覚の一手だったので、妥当な結果だと思います。去年は決勝に行ったり表彰台に乗ったりしていたことで、先のことを考えてしまい、目の前のことに集中し切れていなかった感じです。一手でも高度を伸ばして次のラウンドに手堅く進んでいく作戦が立てられなかっです」

――今後の出場予定を教えてください。

「インスブルック大会はスキップして、シャモニー大会に出場する予定です。体を故障していて、今回は100%の準備できたかと言われたらできませんでした。もう少しトレーニングする時間を貯めて、シャモニーには仕上がった状態で臨みたいです」


▼小田菜摘(大阪府山岳連盟)
第1戦 22位/第2戦 14位
――第1戦、第2戦の感想を教えてください。

「1戦目は自分の弱みである強度の高い課題に対応し切れず準決勝で落ちてしまい、2戦目は調子が良かったんですけど決め切れる一手が出せなかったので悔しいです」

――ワールドカップ参戦2年目に入りました。国際大会には慣れてきましたか?

「去年は連戦が結構キツかったんですけど、徐々に慣れてきて、連戦でも対応できるようになってきたのかなと思います」

――今後の出場予定を教えてください。

「ワールドカップはまだわからないんですけど、ユースの日本選手権はリード(5月)もボルダー(5〜6月)も両方出る予定です」

――今後、改善していきたいポイントはありますか?

「ボルダー的なルートの時に登りが遅くなったり、突破力がなかったりするので、そこを改善していきたいです」


▼中川瑠(日本大学)
第1戦 29位/第2戦 17位
――第1戦、第2戦の感想を教えてください。

「第1戦は調子が良かったがゆえに、予選のランジパートを止められると思って軽はずみに飛んだことで落ちてしまいました。第2戦は手堅く、ゆっくりと自分らしい登りを心がけたんですけど、準決勝が予選よりも暑くて、出番の直前までアイスで冷やしても頭が火照っていました。頭が回っていない状態でずっと登ってる感じで、悪条件下での集中力が足りなかったと思います」

――今後、改善していきたいポイントはありますか?

「体幹を使うのではなく腕で引っ掛けて登る感じになっていて、手や足が悪いだけでバランスが崩れやすいのが大きな課題だと思っています」

――今後の出場予定を教えてください。

「ワールドカップはいつ出場できるかわからないんですけど、出られる可能性があるとすれば(9月の)コペル大会かなと思っているので、それに合わせて調整のスケジュールを立てようかなと考えています」


▼谷井菜月(愛媛県山岳・スポーツクライミング連盟)
第1戦 23位/第2戦 19位
――第1戦、第2戦の感想を教えてください。

「呉江もバリも準決勝の課題に全然対応できなくて、両方とも準決勝敗退という結果になってしまい悔しいです」

――オフに取り組んできたトレーニング成果など、感じたことはありますか?

「オフはボルダーの練習量を増やしてきました。予選課題の強度には対応できたんですけど、準決勝の強度にはまだ対応できなかったのでもっと改善していきたいと思います」

――今後の出場予定を教えてください。

「ワールドカップにはいつ出られるかわかりません。世界選手権は去年のアジア選手権で優勝したため出場の権利があるので、そこに向けて頑張っていきたいと思います」


▼葛生真白(白鴎大学)
第1戦 35位/第2戦 21位
――第1戦、第2戦の感想を教えてください。

「リードのワールドカップに出るのは初めてで、LJCとはまったく違うような強度の高い課題に『世界ってこんな感じなんだ』という心境でした。持久力もボルダー力も、もうすべてが足りていません」

――ボルダーとリードでワールドカップの雰囲気は違いますか?

「リードは海外の選手の登りを見るとリーチ感が違うし、もう何を参考にしたらいいんだろう?と感じています」

――今後の出場予定を教えてください。

「ボルダー第2戦のクリチバ大会に出場予定です。ワールドカップで各国を回ることが初めてなので、まずは自分のできることに全力で取り組みたいです。将来的にはボルダーもリードももっと強い選手になりたいです

2025競技会一覧

  • 第13回リードユース日本選手権多久大会(LYC2025)
  • リードジャパンカップ2025(LJC2025)
  • スピードジャパンカップ2025(SJC2025)第5回スピードユース日本選手権多久大会(SYC2025)
  • ボルダージャパンカップ2025(BJC2025)