ジャパンカップ、そして日本代表へ スポーツクライミングジャパンツアー2026が8月に開幕

8月に開幕するスポーツクライミングジャパンツアー2026。ボルダー6戦、リード3戦、スピード2戦で構成される国内シリーズ戦は、ジャパンカップの出場権獲得を目指す選手から、力試しの場として挑戦する若手まで、多様な選手が集う舞台だ。では、このツアーは選手たちにとってどのような意味を持ち、どんな価値を生み出しているのだろうか。大会を運営する立場と、実際にジャパンツアーから飛躍を遂げた選手たちの声から、その現在地を探った。
2019年のジャパンツアー立ち上げから関わり続けるJMSCA普及委員会の原田佐希氏は、大会の計画から会場選定、日程調整までを担っている。
「初めて開催する会場には、必ず現地に行くようにしています。ジャパンツアーはローカルコンペとは違って、JMSCA主催大会としてのルールに沿ってやらなければいけません。きちんと運営の考え方を共有する必要があるんです。そのぶん、新しい会場を増やせずに固定化してしまっている面もありますね」
一方で、ツアーの開催地やラウンド数は理想だけでは決められないという。
「本当はもっといろいろな地域で開催したい気持ちがあります。ただ、ジャパンツアーは主に参加費で運営している事業です。選手が集まらなければ成立しませんし、会場側の協力も必要です。その中で現実的なバランスを取りながら開催しています」
原田氏は「ボルダーのベルトコンベア方式をジャパンツアーで何戦か経験してからジャパンカップに臨むことは、競技面だけでなくアイソレーションでの過ごし方なども含めて違いが出てくるのでは」と、ジャパンツアーが競技面だけでなく大会経験の面でも価値を持っていると推測している。
ジャパンツアーから日本代表へ
全国の選手が集うジャパンツアーは、ジャパンカップ、そしてその先の日本代表へと続く道でもある。その道を切り拓いた一人が篠沢諒だ。ジャパンツアー2025でボルダーランキング1位となり、ボルダージャパンカップ2026で決勝進出を果たした。
大学3年生だった篠沢にとって、昨シーズンのジャパンツアーは競技人生の節目とも言えるシリーズだったという。
「僕にとってジャパンツアーは、今後の進路を左右する重要な大会でした。(自分の中で)年間3位以内に入ればジャパンカップ、そして日本代表に繋がると思っていたので、その道を切り拓くためのシーズンで最も重要な大会という位置づけでした」
ジャパンカップ出場権を懸けたシリーズ戦ならではの緊張感もあった。
「ジャパンカップに繋がる大会なので、普段以上に緊張感がありました。常連の選手はコンディションや課題への対応を確認しながら、初出場の選手は自分の実力をぶつけようという雰囲気があり、それぞれの立場で一登一登に集中している印象でした」
勝ち上がった先にあるジャパンカップでは、また違った難しさを感じたという。
「ジャパンツアーは勝負課題がはっきりしている印象でしたが、ジャパンカップはすべての課題に対応する総合力や安定感が求められました。オールラウンダーでありながら、一つ抜きん出た強みを持つ選手が勝ち上がる大会だと感じました」
篠沢が決勝進出という結果を残せた背景には、日々の積み重ねと強い覚悟があった。予選では4課題目まで完登がなかったものの、最後まで勝負を諦めなかった。
「とあるマンガの『生きるべきは今』というセリフに影響を受け、今にすべてを懸けるつもりで、指が折れてでも握り続けるという覚悟で挑みました。予選では4課題目まで完登がありませんでしたが、良かった部分に目を向けて最後まで諦めませんでした。また、普段から正規ムーブを意識して登ってきたことで、どこに体を置けばいいかという感覚も身についていました。突出した得意分野はないですが、大きな苦手もないので、すべてのゾーンを確実に取れたことが決勝まで勝ち上がれた要因だったと思います」
15歳から挑めるジャパンツアー
一方で、ジャパンツアーはトップ選手だけの舞台ではない。定員に空きがある場合にはその年の12月31日までに15歳に達する選手にも出場機会が与えられている(通常はその年の12月31日までに16歳に達している選手が出場可能)。
2025年、その制度を利用してリードに出場したのが秋山明日葉だ。世界ユース選手権2026のボルダー、リード日本代表にも選出された秋山が上位カテゴリーへの挑戦を決めた理由は、単純な好奇心だった。
「上のカテゴリーの課題の距離感がどれくらいなのかを確かめてみたくて、自分からエントリーしました」
実際に登ってみると、ユース大会では味わったことのない難しさも待っていた。
「気持ち悪い手が何カ所かあって、普通に落ちそうな感じでした。今年は本格的に参戦するので、その気持ち悪い手をしっかり止められるようになりたいです」
それでも得られた経験は大きかったという。
「少しでも課題を知ることができたのは良かったですし、いい経験になりました。ジャパンツアーはいろいろな選手が出ているので、自分の実力を測るにはいい場になると思いますし、練習にも生かせると思います」
秋山はリード第2戦で8位、第3戦で2位タイの好成績を残した。こうした若手選手の挑戦を、原田氏は歓迎している。
「ボルダーは定員を満たすことが多いですが、定員に満たなければ15歳の選手もジャパンツアーに出場できます。昨年のリードでは秋山選手も挑戦してくれました。ジャパンツアーとはいえ大人の課題に触れられる機会なので、若い選手たちには積極的に活用してほしいと思っています」
15歳から挑めるジャパンツアー
さらに原田氏は、ユース世代へ向けた将来的な思いも語った。
「ユース日本選手権に繋がるようなジャパンツアーはあっても面白いかもしれません。ローカルコンペとは違う形でユース世代が経験を積める機会が増えれば、将来的にはユースカテゴリー全体のレベルアップにも繋がると思います」
ジャパンツアーは、日本代表を目指す選手にとっての登竜門であり、若手選手にとっては自らの現在地を知る挑戦の場でもある。篠沢の飛躍も、秋山の挑戦も、その価値を示す好例と言えるだろう。
2026シーズンもまた、多くの選手たちがこの舞台に集う。ジャパンカップや日本代表を目指す戦いはもちろん、その先の成長へ繋がる経験の場としても、ジャパンツアーは国内クライミング界を支える重要なシリーズであり続けている。








